
ミャンマーへの旅行を検討されているものの、現地の情勢が分からず不安に感じていませんか。2021年のクーデター以降、ミャンマー旅行は危険という声を多く耳にするようになりました。
この記事では、外務省の渡航情報や現在の危険度、そして現地の治安ランキングといった客観的な情報に基づき、ミャンマーの「今」を詳しく解説します。
観光は可能なのか、女性が旅行する場合の注意点、さらには最新の入国条件まで、渡航を判断するために必要な情報を網羅しています。安全な旅の実現に向けて、まずは正しい知識を身につけましょう。
記事のポイント
- 外務省が発表する最新の危険レベル
- クーデター以降の現地の治安情勢と旅行のリスク
- 観光客が巻き込まれやすい犯罪と具体的な防犯対策
- 女性旅行者が特に注意すべき点と緊急時の連絡先
ミャンマー旅行の危険性|現在の治安状況
- 外務省の渡航情報で危険レベルを確認
- クーデター以降の危険度と情勢
- 世界平和度指数での治安ランキング
- 現在の入国制限とビザについて
- 主要都市での観光は可能なのか
外務省の渡航情報で危険レベルを確認

ミャンマーへの渡航を考える上で最も重要な指標となるのが、外務省が発表している海外安全情報です。2024年4月2日時点で、ミャンマー全土に「レベル2:不要不急の渡航は止めてください。」以上の危険情報が発出されています。
特に、国軍と少数民族武装勢力などとの衝突が激化している多くの地域には、最も厳しいレベルの一つである「レベル3:渡航は止めてください。(渡航中止勧告)」が出されています。これは、どのような目的であれ渡航を中止すべきであることを意味します。
レベル3が指定されている地域は非常に広範にわたっており、以下の通りです。
州・地域 | 対象地区 |
ラカイン州 | マウンドー県、シットウェ県(シットウェ市街地除く)、ミャウー県など |
チン州 | パレワ地区、ティディム地区、ハーカー地区など8地区 |
シャン州 | コーカン自治地帯、ライザー周辺、ムセ地区、ラショー地区など13地区 |
ザガイン地域 | インドー地区、コーリン地区、シュエボー地区など14地区 |
マグウェ地域 | ガンゴー地区、ティーリン地区など5地区 |
カヤー州 | デモーソー地区、プルーソー地区など4地区 |
その他 | バゴー地域5地区、タニンダーリ地域2地区、カレン州2地区、モン州1地区 |
これらの地域では、戦闘や空爆に巻き込まれる危険性が極めて高く、大変不安定な状況が続いています。
上記以外の地域もレベル2に指定されており、都市部を含め、ミャンマー全土で予測不能な事態が発生する可能性があることを示唆しています。渡航を検討する際は、必ず外務省海外安全ホームページで最新の情報を確認することが不可欠です。
外務省海外安全ホームページ ミャンマー危険・スポット・広域情報
クーデター以降の危険度と情勢

ミャンマーの治安が著しく悪化した直接的な原因は、2021年2月1日に発生した軍事クーデターです。国軍が実権を掌握して以降、国軍と民主派勢力や少数民族武装勢力との間で激しい衝突が国全体で断続的に発生しています。
この影響は地方の戦闘地域に留まりません。最大都市ヤンゴンを含む都市部においても、爆弾事件や銃撃事案が報告されており、軍や警察関連施設、行政施設などが主な標的となっています。
しかし、民間人が巻き添えになるケースも後を絶たず、「安全な場所」は非常に少ないのが実情です。
さらに、国軍は反発する勢力を抑え込むため、全国330地区のうち60以上の地区に戒厳令を発令しています。戒厳令下の地域では、治安部隊による厳しい検問や拘束、夜間外出禁止令などが敷かれ、市民の行動は大きく制限されます。
このような状況下では、外国人旅行者であってもデモや騒乱に巻き込まれたり、当局からスパイ行為などを疑われたりするリスクが常に伴います。
情勢は日々変化するため、かつての穏やかなミャンマーのイメージとは全く異なる、非常に不安定な状況にあると認識する必要があります。
世界平和度指数での治安ランキング

ミャンマーの治安状況を客観的に把握するための一つの指標として、国際NGO「経済平和研究所(IEP)」が発表する世界平和度指数(Global Peace Index)があります。
2024年の報告によると、調査対象となった163カ国中、ミャンマーは148位という非常に低い順位でした。これは、国内の紛争や政治的不安定さ、暴力事件の多さなどが深刻なレベルにあることを示しています。
ちなみに、日本は同ランキングで17位に位置しており、両国の平和度には大きな隔たりがあることが分かります。
このランキングは、旅行先としての安全性を測る絶対的なものではありませんが、ミャンマーが現在、世界的に見ても特に治安リスクの高い国の一つとして評価されていることを示しています。
クーデター以前から国内に民族間の対立などの課題を抱えていましたが、近年の政情不安が国の平和度を著しく低下させているのは間違いありません。この客観的なデータも、渡航を慎重に判断する上での重要な参考情報となります。
現在の入国制限とビザについて

現在のミャンマーに入国するためには、目的を問わずビザの取得が必須です。しかし、クーデター以降、観光を目的としたビザの発給は非常に制限されており、以前のように気軽に旅行で訪れることは困難な状況です。
ビジネス目的など、特別な理由がある場合に限りビザが発給される傾向にありますが、その際も厳格な審査が行われます。また、入国条件は頻繁に変更されるため注意が必要です。
例えば、新型コロナウイルスの影響で導入された健康診断書の提示や、政府が認可した特定のホテルへの宿泊義務などが、事前の通知なく変更・強化される可能性があります。
空港での入国審査も厳格化しており、持ち物やスマートフォン、SNSの投稿内容までチェックされる事例が報告されています。
軍や政治体制に批判的と見なされる画像や文章が見つかった場合、入国を拒否されるだけでなく、拘束されるという深刻な事態に発展する恐れも否定できません。
このように、ビザの取得自体が高いハードルである上に、入国プロセスにも予測不能なリスクが伴うのが現状です。渡航を計画する際は、在日ミャンマー大使館の公式発表を常に確認し、最新の情報を入手することが求められます。
主要都市での観光は可能なのか

SNSなどで一部の旅行者がミャンマーを訪れている報告を見かけることがあるかもしれませんが、それが安全の証明にはなりません。首都ネピドーや最大都市ヤンゴンは、地方の戦闘地域に比べれば比較的平穏に見えることもあります。
しかし、これらの都市部でも、いつどこで抗議デモや治安部隊との衝突、爆発事件が発生するか予測がつきません。過去には、こうした騒乱に巻き込まれて民間人に死傷者が出たケースもあります。観光客が「自分は大丈夫」と考えるのは非常に危険です。
また、仮に入国できたとしても、軍政下では行動が大きく制限されます。前述の通り、写真撮影が厳しく制限されているほか、治安部隊による検問も頻繁に行われます。
自由に街を散策したり、現地の人々と交流したりといった、かつてのような観光を楽しむことは現実的ではありません。
突発的な交通遮断や外出制限により、移動の継続が不可能になるリスクも考えられます。これらの点を総合的に考慮すると、現在のミャンマーにおいて、個人の観光目的での渡航は極めてリスクが高く、推奨できる状況ではないと言えます。
ミャンマー旅行で危険を避けるための対策
- ミャンマー旅行で注意すべき犯罪
- 女性旅行者が特に注意すべきこと
- 写真撮影の禁止と行動制限
- 犯罪被害時の緊急連絡先
ミャンマー旅行で注意すべき犯罪

政情不安や経済の悪化は、一般犯罪の増加にもつながっています。やむを得ない理由でミャンマーに渡航・滞在する場合、旅行者を狙った犯罪への警戒が不可欠です。特に注意すべき犯罪は以下の通りです。
スリ・ひったくり
市場やバスターミナル、観光名所など、人が多く集まる場所ではスリやひったくりが頻発しています。手口としては、集団で取り囲んで注意をそらしている間に貴重品を盗む、バイクで走り去り際にバッグを奪うといったものが挙げられます。
対策として、貴重品は体の前でしっかりと抱える、華美な装飾品は身につけない、多額の現金を持ち歩かないといった基本的な自己防衛が鍵となります。
ぼったくり
タクシーやトゥクトゥク(三輪タクシー)での料金トラブルも多発しています。メーターを使用せずに法外な料金を請求する、わざと遠回りをするなどの手口が典型的です。乗車前に料金を交渉し、明確に合意することがトラブル回避につながります。
Grabなどの配車アプリは料金が事前に確定するため、比較的安心して利用できますが、深夜の利用は避けるのが賢明です。
詐欺
偽の警察官を名乗って金品を要求する、非公式な両替所で不利なレートを提示したり偽札を渡したりする、といった詐欺も報告されています。
公的機関の人間を名乗る人物には身分証の提示を求める、両替は銀行など信頼できる場所で行う、といった慎重な行動が求められます。見知らぬ人からの安易な儲け話や親切な申し出には、毅然とした態度で断ることが大切です。
万が一、強盗などの被害に遭った場合は、身の安全を最優先し、決して抵抗しないでください。犯人を刺激すると、より大きな危害を加えられる可能性があります。
女性旅行者が特に注意すべきこと

ミャンマーは敬虔な仏教国であり、人々は穏やかで親切な一面も持っています。しかし、現在の不安定な状況下では、特に女性旅行者は犯罪の標的になりやすいという現実も認識しておく必要があります。
最も注意すべきは、夜間の単独行動です。ヤンゴンのダウンタウンエリアなどにはバーやナイトクラブがありますが、夜間は酔っ払いによるトラブルや性犯罪に巻き込まれるリスクが高まります。日中であっても、人通りの少ない路地や貧困地区への立ち入りは避けるべきでしょう。
服装にも配慮が必要です。ミャンマーは仏教文化が根付いており、寺院などを訪れる際は肌の露出を控えるのがマナーです。
それだけでなく、過度に肌を露出した服装や体にフィットした服装は、意図せず不要な注目を集め、トラブルの原因となる可能性があります。現地の文化を尊重し、周囲に溶け込むような控えめな服装を心がけることが、安全対策にもつながります。
また、見知らぬ男性から親しげに話しかけられた場合は、安易に信用せず、一定の距離を保つことが賢明です。信頼できるホテルの送迎サービスや、日中の配車アプリを利用するなど、移動手段にも気を配ることでリスクを軽減できます。
写真撮影の禁止と行動制限

軍政下のミャンマーでは、写真や動画の撮影が極めて深刻なトラブルに発展する可能性があります。外国人旅行者であっても例外ではなく、厳しい規則が適用されるため、最大限の注意が求められます。
絶対に撮影してはならない対象は、国軍兵士、警察官、軍や政府の関連施設、車両、そして抗議デモの様子です。これらの対象にカメラやスマートフォンを向ける行為は「スパイ活動」や「政府への敵対行為」と見なされる恐れがあります。
過去には、ヤンゴン市内で撮影をしていた日本人が当局に拘束され、長期間にわたり刑務所に収監されるという重大な事案も発生しています。何気ない街角の風景を撮影したつもりが、偶然、軍関係のものが写り込んでしまう可能性も否定できません。
このようなリスクを避けるため、ミャンマー滞在中は、公共の場での撮影行為自体を控えるのが最も安全な対策と言えます。
当局から疑いをかけられた場合、言葉の壁もあり、自身の潔白を証明することは非常に困難です。軽い気持ちでの撮影が、取り返しのつかない事態を招きかねないことを、常に念頭に置いて行動してください。
犯罪被害時の緊急連絡先

万が一、ミャンマーで犯罪や事故に巻き込まれてしまった場合に備え、緊急時の連絡先を事前に把握しておくことが大切です。ただし、現地のインフラは日本ほど整っておらず、緊急通報がスムーズにつながらない可能性も考慮しておく必要があります。
連絡先 | 電話番号 | 備考 |
警察 | 199 | |
消防 | 191 | |
救急 | 192 | つながりにくい場合が多いとされています |
在ミャンマー日本国大使館 | 01-549644~8 | (国外からは +95-1-549644~8) |
緊急事態が発生した際は、まず上記の番号に連絡を試みてください。オペレーターは英語で対応してくれる場合があります。落ち着いて、現在の状況と場所を伝えましょう。
盗難などの緊急性の低い被害の場合は、最寄りの警察署に直接出向いて被害届を提出することになります。
パスポートの紛失・盗難や、身の危険を感じるような重大なトラブルの場合は、ためらわずに在ミャンマー日本国大使館に連絡し、指示を仰いでください。大使館は、ヤンゴンに所在しています。
やむを得ず渡航する際は、これらの連絡先をスマートフォンのメモだけでなく、紙にも控えて常に携帯することをお勧めします。
ミャンマー旅行の危険性を理解し渡航判断を
この記事で解説してきた通り、現在のミャンマー旅行には極めて高い危険性が伴います。渡航を最終的に判断する前に、以下の重要なポイントを再確認してください。
✓ 外務省はミャンマー全土に危険レベル2以上を発出中
✓ 多くの地域で「渡航中止勧告」にあたるレベル3が指定されている
✓ 2021年のクーデター以降、国軍と民主派勢力の衝突が続いている
✓ ヤンゴンなど都市部でも爆弾事件や銃撃が散発している
✓ 世界平和度指数では163カ国中148位と極めて低い
✓ 観光ビザの発給は現在、非常に制限されている
✓ 入国時にはスマートフォンの内容まで検査されるリスクがある
✓ 個人の観光目的での渡航は現実的ではない
✓ スリ、ぼったくり、詐欺などの一般犯罪が増加傾向にある
✓ 特に夜間の単独行動は絶対に避けるべきである
✓ 女性は服装や行動に一層の注意が必要となる
✓ 軍や警察、デモの撮影は厳禁で、違反すると拘束の恐れがある
✓ 緊急時の通報ダイヤルはつながらない可能性がある
✓ 万が一の際は在ミャンマー日本国大使館へ連絡する
✓ 最新の治安情報は外務省海外安全ホームページで必ず確認する