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バンコクの正式名称と意味を解説!世界一長い名前の覚え方とは

バンコクの煌びやかな高層ビル群の夜景の上に、大きく「BANGKOK?」という文字と疑問符が重なっている画像

タイの首都といえばバンコクですが、実はこの名前が正式名称ではないことをご存知でしょうか。

現地では全く違う名前で呼ばれており、その正式名称は世界一長い地名として有名です。旅行中に現地のガイドさんからその長すぎる名前を聞かされて驚いた経験がある方もいるかもしれませんね。

バンコクの正式名称にはどのような意味が込められているのか、そしてなぜこれほどまでに長くなってしまったのか、その背景にはタイの深い歴史と文化が隠されています。

この記事ではバンコクの正式名称や意味に関する由来を紐解きながら、2022年に話題になった名称変更騒動の真相や、現地の人々が実践しているユニークな覚え方についても詳しく解説していきます。

記事のポイント

  • 世界一長い首都名としてギネスに登録されている正式名称の全貌
  • タイ語や英語での表記とカタカナでの正確な読み方
  • 長い名前に込められた宗教的な意味や歴史的背景
  • 現地で使われる通称や名称変更騒動の真相

バンコクの正式名称とその意味の全貌

私たちが普段何気なく呼んでいる「バンコク」という名前ですが、実はタイの人々にとってそれはあくまで外国人向けの呼び名に過ぎません。本来の正式名称は驚くほど長く、そこには都市の繁栄を願う壮大なメッセージが込められています。まずは、その長さや具体的な意味について詳しく見ていきましょう。

世界一長い名前としてギネスに登録

結論から言うと、バンコクの正式名称は世界で最も長い地名としてギネス世界記録に登録されています。

ギネス世界記録のロゴマークと、非常に長いバンコクの正式名称(タイ文字およびラテン文字の一部)がデザインされた画像

これは単なる都市の名称という枠を超え、新たに樹立された王朝の正統性と威信を内外に示すための、一種の「建国宣言書」や「壮大な詩」としての役割を果たしていると言っても過言ではありません。

1782年、現在のタイ王室であるチャクリー王朝の初代国王、ラーマ1世が即位しました。彼は、トンブリー王朝の首都が地形的に問題があることを懸念し、チャオプラヤー川の西岸から東岸にある現在のプラナコーン地区への遷都を決断します。

この新都建設にあたり、ラーマ1世はアユタヤ王朝の栄光を復興させるという強い意志を込め、サンスクリット語とパーリ語を駆使した極めて格式高い名前を付けました。後にラーマ4世によって一部が改定されましたが、基本的には200年以上もの間、この長い名前が現在まで受け継がれています。

正式名称は非常に長いため、タイの行政機関や公文書においても、通常は冒頭部分を切り取った略称が使用されますが、儀式的な場面では全文が読み上げられることもあります。

タイ語や英語表記の文字数を確認

では、実際にどれくらいの長さなのでしょうか。文字数を見てみると、その異常な長さがよくわかります。

まず、現地の言葉であるタイ文字での表記です。

กรุงเทพมหานคร อมรรัตนโกสินทร์ มหินทรายุธยา มหาดิลกภพ นพรัตนราชธานีบูรีรมย์ อุดมราชนิเวศน์มหาสถาน อมรพิมานอวตารสถิต สักกะทัตติยวิษณุกรรมประสิทธิ์

タイ語には基本的に分かち書き(単語ごとのスペース)がないため、まるで終わりのない鎖のように文字が連なっています。文字数は数え方にもよりますが、130文字以上になります。

次に、ギネス記録の基準となっているラテン文字(英語)表記です。

Krung Thep Maha Nakhon Amon Rattanakosin Mahinthara Yutthaya Mahadilok Phop Noppharat Ratchathani Burirom Udomratchaniwet Mahasathan Amon Phiman Awatan Sathit Sakkathattiya Witsanukam Prasit

英語表記では、文字数単体でカウントすると168文字となります。これは、かつてのTwitterの文字数制限(140文字)を大幅に超える長さですね。パスポートや入国カードの「出生地」欄などに書き込むのは物理的に不可能です。そのため、行政文書などでは適切な略称が使われています。

この長さは、世界中の地名と比較しても群を抜いています。例えば、ウェールズにある「ランヴァイル・プルグウィンギル・ゴゲリフウィルンドロブル・ランティシリオゴゴゴホ」という駅名も有名ですが、バンコクの正式名称はそれを上回る長さです。

そして、宗教的な意味の深さを持っています。単なる記号としての名前ではなく、一文字一文字に「宝石」「神」「平和」といったポジティブな意味が込められており、言霊の力を信じるタイ文化の象徴とも言えるでしょう。

(出典:Guinness World Records "Longest place name")

カタカナでの読み方と発音のコツ

この世界一長い名前を、私たち日本人が発音できるようにカタカナで表記してみましょう。一気に読もうとすると確実に息切れしてしまうので、意味のまとまりごとに区切って表記します。

クルンテープ・マハーナコーンから始まる、バンコクの長い正式名称を読みやすく区切って並べたカタカナ表記のリスト

クルンテープ・マハーナコーン・アモーンラッタナコーシン・マヒンタラーユッタヤー・マハーディロック・ポップ・ノッパラット・ラーチャタニーブリーロム・ウドムラーチャニウェートマハーサターン・アモーンピマーン・アワターンサティット・サッカタッティヤウィサヌカムプラシット

いかがでしょうか。見ているだけで目が回りそうですが、実は発音にはいくつかのコツがあります。この正式名称に関しては、ある程度のリズム(韻律)が決まっており、詩を朗読するように抑揚をつけて読むのが一般的です。

発音する際に注意したいのは、長母音と短母音の区別です。「マハー(偉大な)」や「ラーチャ(王の)」といった部分は、しっかりと音を伸ばすことで、より原音に近い響きになります。また、「ユッタヤー」や「サッカタッティヤ」のような促音(ッ)が含まれる箇所は、リズムを作る上で重要なアクセントポイントになります。

この名称を覚えることは、単なるトリビアの実践以上の意味を持ちます。なぜなら、この音の並び自体が、タイの古典文学や詩のリズムに基づいて構成されているからです。実際に口に出して読んでみると、不思議と心地よいリズム感があることに気づくはずです。

これは「チャント(詠唱)」に近い性質を持っており、読むこと自体が一種の功徳を積む行為であるかのような荘厳さを秘めています。もし現地の友人ができたら、この長い名前を流暢に言ってみてください。きっと驚かれると同時に、タイ文化への深い敬意として受け取ってもらえるはずです。

長い名称を分解して由来を解説

正式名称の意味を象徴する、タイの天使、エメラルド仏、ワット・アルンなどの寺院を描いたイラスト

ただ長いだけの呪文のように聞こえるかもしれませんが、一つひとつのフレーズが、サンスクリット語やパーリ語といったインドの古典言語に由来する深い意味があります。ここでは、その壮大な意味をパーツごとに分解し、詳しく解説していきます。

フレーズ(カタカナ)主な意味・由来
クルンテープ・マハーナコーン「天使の都、偉大なる都」。ここでの天使は西洋的なイメージよりも、ヒンドゥー教の「デーヴァ(天部)」に近い存在です。
アモーンラッタナコーシンインドラ神の不滅の宝石(エメラルド仏)のような都。王宮寺院ワット・プラケオに安置されているエメラルド仏を都市の守護神として称えています。
マヒンタラーユッタヤーインドラ神のように偉大で、戦争のない平和な都。新都が、旧都「アユタヤ」の正統な後継であり、今度こそは難攻不落であることを誓っています。
マハーディロック・ポップ偉大なる世界、宇宙の中心。都市が単なる地理的な場所ではなく、繁栄に満ちた世界の中心であることを示唆しています。
ノッパラット・ラーチャタニーブリーロム九種の宝石のような、心楽しき王の都。九種の宝石は王権の象徴であり、王の徳によって国が豊かになることを意味しています。
ウドムラーチャニウェートマハーサターン多くの王宮に富む、偉大なる場所。王宮をはじめとする壮麗な建築群を指す。
アモーンピマーン・アワターンサティット神が化身となって住みたまう天上の宮殿。王宮が神の住処であることを宣言しています。
サッカタッティヤウィサヌカムプラシット帝釈天が建築の神ヴィシュカルマに命じて造りたまった。
王権を象徴する九つの宝石(ノッパラット)、チャクリー王朝の王、法輪、ガルーダなど、都市名の後半部分の意味を表すイラスト

このように細かく分解して見てみると、バンコクという都市がどのように設計されたのか、その思想的背景が浮き彫りになります。特筆すべきは、ヒンドゥー教と仏教の概念が融合している点です。

ヒンドゥー教の神々が登場する一方で、仏教の至宝が都市の核として据えられています。これは、タイにおいて、王は仏教の守護者であると同時に、神の化身として民衆を統治するという正当性を、都市名そのもので証明しているのです。

また、「マヒンタラーユッタヤー」の部分には、敗戦のトラウマを克服しようとする国家の強い意志が込められています。かつてビルマ軍に破壊された旧都アユタヤの悲劇を乗り越え、「今度こそは難攻不落の都にする」という強い意志が感じられます。

通称クルンテープとの違いとは

ここまで壮大な正式名称の意味を見てきましたが、実際のタイ人の日常生活において、このフルネームが使われることはまずありません。あまりにも長すぎて実用的ではないため、タイの人々は通常、最初のフレーズを取って「クルンテープ(Krung Thep)」と呼んでいます。

では、私たちがよく使う「バンコク(Bangkok)」とは一体何なのでしょうか。この言葉の起源は、アユタヤ時代から存在した「水辺の村(バーン・マコーク)」という古い地名に由来しており、主に外国人が使い続けてきたものです。

つまり、現在の状況を整理すると以下のようになります。

ハートマークで表現された「クルンテープ(誇り高き名前)」と、握手マークで表現された「バンコク(対外的な通称)」を対比させた図
  • クルンテープ:タイ人が使用する、内向けの誇り高い名称(正式名称の略称)。「天使の都」という意味を持ち、都市の神聖さを表す。
  • バンコク:外国人が使用する、外向けの通り名。もともとはローカルな地名に由来する。

タイの人々にとって「バンコク」という呼び名は、自分たちの首都を指す言葉として理解はしていますが、どこか「よそよそしい」あるいは「外国人が使う言葉」というニュアンスが含まれています。タイ人のアイデンティティとしては、やはりこの街は「天使の都(クルンテープ)」なのです。

バンコクの正式名称や意味の豆知識

正式名称の意味や構造がわかったところで、ここからはさらに深掘りした豆知識をご紹介します。最近のニュースでの騒動や、現地での面白い覚え方など、知っておくと旅の会話が弾むネタばかりです。

2022年の名称変更騒動の真相

記憶に新しい方もいるかもしれませんが、2022年2月15日、突如として「タイの首都バンコクの名称が変更される」というニュースが世界を駆け巡り、SNS上で大きな議論と混乱を巻き起こしました。

「もうバンコクとは呼べなくなるのか?」「航空券や地図の表記はどうなるのか?」といった不安の声が多く上がりましたが、この騒動の真相は、実はもっと行政的で細かな表記ルールの変更に過ぎませんでした。

これは正確には「名称変更」ではなく「表記基準の改訂」でした。

「速報:首都名変更か!?」というヘッドラインとともに、変更点がセミコロンから括弧に変わっただけであることを解説するニュース風の画像

旧表記:Krung Thep Maha Nakhon; Bangkok
新表記案:Krung Thep Maha Nakhon (Bangkok)

ご覧の通り、変更されたのは文字ではなく、セミコロン(;)で区切られていたものが、括弧()に変更されただけです。タイ政府としては「クルンテープ・マハーナコーン」が正式名称であることを明確にしつつ、「バンコク」も引き続き慣用名として認めるという意図でした。

この騒動は、結果として世界中の人々に「バンコクの正式名称は実は違う」という事実を再認識させるPR効果をもたらしました。

現在でも国際的には「Bangkok」の使用が推奨されていますので、航空券の予約などで心配する必要はありません。

簡単な覚え方は歌でリズムに乗る

「168文字もの長い名前、どうやって覚えるの?」と途方に暮れる方もいるでしょう。タイ語ネイティブでない私たちにとって、意味の分からない単語の羅列を暗記するのは至難の業です。

しかし、安心してくだい。タイ人の多くも、この名前を教科書の文字として暗記しているわけではありません。彼らには秘密兵器があります。それは「歌」です。

「168文字の覚え方?答えはロックソングにあった」というキャッチコピーと、Krung Thep Maha Nakhonという文字がデザインされた画像

日本でも、徳川将軍家の名前や元素記号を語呂合わせやリズムで覚えることがありますが、タイではこの正式名称そのものを歌詞にしたポップソングが存在し、それが国民的な「暗記ソング」として定着しています。音楽の力は偉大で、単調な文字の羅列も、メロディに乗せることで驚くほどスムーズに脳内にインプットされるのです。

アサニー・ワサンの歌詞で覚える

その「暗記ソング」の決定版として知られるのが、タイの伝説的なロックバンド「アサニー・ワサン(Asanee-Wasan)」が1989年にリリースした楽曲、その名もズバリKrung Thep Maha Nakhonです。

この曲の構成は極めてユニークで、ミドルテンポの心地よいロックサウンドに乗せて、ボーカルが少し気怠げに、リズミカルに正式名称を繰り返します。この曲が大ヒットしたことで、それまで正式名称を言えなかった多くのタイ人が、歌と一緒にフルネームを覚えることができるようになりました。

実際にタイの学校教育でもこの歌が活用されることがあるほどで、現地の若者が正式名称を言えるのは、だいたいこの曲のおかげだと言われています。もしあなたがタイ人の前でこの曲のメロディを少しハミングするだけで、「おお!アサニー・ワサンを知っているのか!」と一気に距離が縮まること間違いありません。

現地ではどこまで言えば通じるか

最後に、旅行者が現地でこの知識をどう活用すべきか、実践的なアドバイスをお伝えします。タクシーやトゥクトゥクの運転手に行き先を告げる際、あるいは現地の人と会話をする際、どの名称を使えばよいのでしょうか。

結論から言えば、外国人旅行者は「バンコク」だけで100%通じますし、それで全く問題ありません。現地のタイ人も、相手が外国人であれば「バンコク」と言われた方がスムーズに理解できますし、彼ら自身も外国人相手には「バンコク」を使います。

しかし、もしあなたが少しタイ語を知っていて、現地の人とより深くコミュニケーションを取りたいと思うなら、「クルンテープ」と言ってみることを強くおすすめします。それだけで、相手の表情はパッと明るくなるでしょう。「この外国人は、私たちの文化や本来の名前を知ってくれているんだ」という敬意が伝わるからです。

ただし、張り切ってフルネームを言う必要は全くありません。むしろ、日常会話でフルネームを使うことはタイ人同士でもまずありませんので、突然長い名前を唱え始めると、「何かのお祈りか?」「あの歌を歌いたいのか?」と困惑されたり、笑われたりするのがオチです。

バンコクの正式名称と意味のまとめ

夕暮れのバンコクの寺院シルエットを背景に、「この街は、建国の祈りを込めた一編の詩」というメッセージが書かれた画像

今回は、世界一長い首都名として知られるバンコクの正式名称について、その意味や由来、歴史的背景、そして現代における受容のされ方までを深掘りしてきました。

あの長大な名称は、単なる奇妙な豆知識や文字の羅列ではありません。それは、18世紀の戦乱の世において、アユタヤの悲劇を乗り越え、神々の加護と王の徳によって永遠に繁栄する理想郷を築こうとした、当時の人々の不屈の精神と祈りの結晶です。

「インドラ神の宝石」や「神が住まう宮殿」といった美しい言葉の数々は、この都市が単なる行政の中心地ではなく、地上に現れた天界そのものであるという高らかな宣言でもありました。

普段私たちは利便性のために「バンコク」という短い呼び名を使っていますが、その背後には「クルンテープ・マハーナコーン(天使の偉大なる都)」という誇り高い名前と、200年以上にわたって受け継がれてきた壮大な物語が存在しています。

次にタイを訪れる際は、煌びやかな寺院や近代的なスカイスクレイパーを眺めながら、この長い名前に込められた「平和」と「繁栄」への願いに思いを馳せてみてはいかがでしょうか。きっと、目の前の風景がより一層、神秘的で愛おしいものに見えてくるはずです。

 参照:首都バンコクの正式名称(タイ国政府観光庁)

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