
インドネシアへ行く際、現地の友人や取引先にお土産やプレゼントを渡したいけれど、何かタブーがあるのではないかと不安に思っていませんか。
実は、インドネシアでは宗教的な背景や文化の違いから、日本では普通のお菓子やビジネスでの手土産が、思いがけずタブーに触れてしまうことがあります。誕生日のお祝いや、香水を贈る際、さらには渡すときの左手の使い方など、知っておくべきポイントがたくさんあるのですね。
この記事では、インドネシアのプレゼントのタブーについて詳しく解説していきます。お相手に心から喜んでもらい、良好な関係を築くための参考にしてみてください。
記事のポイント
- イスラム教やヒンドゥー教に基づくNGな品物と成分
- 左手の扱いや渡し方などインドネシア特有の身体的マナー
- 香水やハンカチなど意味合いで避けるべきアイテム
- ビジネスシーンで失敗しない贈り物と喜ばれる日本製品
インドネシアのプレゼントのタブーと基本
インドネシアでプレゼントを渡す際、最も重要になるのが宗教的な価値観と、現地ならではの身体的なマナーです。ここでは、プレゼント選びの根幹となるタブーと基本ルールについて詳しく見ていきましょう。
イスラム教とハラールの基礎
インドネシアでプレゼントを選ぶ際に、絶対に避けて通れないのがイスラム教のルールです。なんとインドネシアは全人口の約9割がイスラム教徒という世界最大のムスリム大国なんですね(出典:外務省『インドネシア共和国基礎データ』)。
そのため、プレゼント選びでは「ハラール(許されたもの)」と「ハラム(禁じられたもの)」の境界線をしっかり理解しておく必要があります。
特に食品や日用品を贈る場合、豚肉やアルコールが含まれていないかをチェックするのは基本中の基本かなと思います。
イスラム教において豚は「不浄(Najis)」とされており、豚肉そのものはもちろんですが、豚由来の成分を含むラード、ゼラチン、ショートニング、ポークエキスなども一切口にすることができません。
もし知らずに贈ってしまったら、マナー違反どころか相手の信仰心を深く傷つけてしまうことになりかねないんですね。

【特に注意したいハラムの成分】
- ゼラチン(グミ、マシュマロ、ゼリー、ヨーグルトなど)
- ショートニングや乳化剤(クッキーやケーキなどの焼き菓子)
- みりん、料理酒、酒精(和菓子や洋菓子、一部の調味料)
- ポークエキス、ブイヨン(ラーメン、スープ、スナック菓子など)
さらに、食品以外でもアルコール成分には注意が必要です。たとえば、調味料として使われているみりんや料理酒、あるいはアルコール成分が強めに含まれているウェットティッシュや手指の消毒液なども、保守的な方にとっては敬遠されることがあります。
また、厳格な教義では偶像崇拝が禁じられているため、人の顔がリアルに描かれたお人形や、特定の神仏に関連するお守り、仏像のレプリカなども、贈り物としては避けたほうが無難ですね。
相手の宗教観を尊重する姿勢が、喜ばれるプレゼントの第一歩になると思います。
バリ島のヒンドゥー教の贈り物
インドネシアといえばイスラム教のイメージが強いかもしれませんが、美しいリゾート地として世界中から愛されるバリ島は少し事情が異なります。
バリ島を中心に分布しているのは「バリ・ヒンドゥー」と呼ばれるヒンドゥー教徒の方々なんですね。彼らの文化において、牛はとても神聖な動物として崇められているため、牛肉を食べることや牛に由来する製品を使うことはタブーとされています。
ですから、イスラム教徒の方に豚革のアイテムがNGなのと同じように、ヒンドゥー教徒の方に対しては、高級感を出そうと思って牛革のお財布や名刺入れ、ベルトなどをプレゼントするのは避けるべきなんです。
せっかく質の良い日本製のレザー製品を選んでも、素材が牛革だとお相手を困惑させてしまうかもしれません。
もちろん食品にも注意が必要で、牛肉のジャーキーや、ビーフエキスが含まれたスナック菓子、ブイヨンを使ったレトルト食品なども贈り物としては不適切になります。
バリ島の一部では牛肉を食べることにそこまで厳格ではない若い世代の方もいらっしゃるようですが、ビジネスの場や初対面での公式な贈答シーンでは、リスクを避けるために牛関連の品目は完全に選択肢から外すのが鉄則かなと思います。

【ヒンドゥー教徒へのプレゼントのコツ】
宗教的に安全なアイテムを選びたい場合は、植物由来の成分で作られたお菓子や、布製品、実用的な文房具などを選ぶと安心です。同じ国でも相手の信仰によってタブーがガラッと変わるのが、インドネシアの奥深く面白いところですね。
左手はNG?渡す際のマナー
インドネシアでは、プレゼントの品物そのものの金額や価値と同じくらい、あるいはそれ以上に「どのように渡すか」という身体的な所作が非常に重視されます。ここで絶対に覚えておきたいのが、「左手は不浄の手」という共通認識です。
インドネシアの文化において、左手はトイレでの洗浄などに使用する手として定義されています。この考え方は田舎の村だけでなく、現代の都市部のビジネスシーンでも根強く残っているのですね。
そのため、人にものを渡すときに左手を使うのは、相手を不潔な存在として扱っていると誤解されるほどの大変失礼な行為にあたります。
【身体的なマナーの重要ポイント】
- プレゼントを渡すときは必ず右手を使う。より丁寧にするなら両手を添える。
- 名刺の受け渡しやお金の支払いも、絶対に右手(または両手)で行う。
- どうしても手が塞がっている場合は「左手で失礼します(Maaf, pakai tangan kiri)」と一言謝罪を添える。
また、左手以外にも身体の部位に関するタブーがいくつかあります。
たとえば「頭部への接触」は最大のタブーの一つです。頭は神聖な部位であり、魂が宿る場所とされているため、たとえ相手が小さな子どもであっても、可愛がりのつもりで頭をなでたりポンポンと触れたりしてはいけません。
さらに、座った際に足の裏を人に向けることも、相手を侮蔑する行為と受け取られます。床に座る習慣のある場所や、足を組むときには、足先を自分に向けるか見えないように隠す配慮が必要です。
こうした非言語のコミュニケーションにも気を配ることで、あなたの誠実さがより一層伝わるかなと思います。

香水やハンカチがダメな理由
「プレゼントにはお洒落で実用的なものを」と考えて、ブランド物の香水や素敵な柄のハンカチを選ぶ方も多いかもしれません。
しかし、インドネシアには実用性に関わらず、特定の品目そのものにネガティブな意味合い(ジンクス)が付与されているものがあり、注意が必要です。
まず香水についてですが、実は解釈が少し分かれるアイテムなんです。香水は時間の経過とともに香りが薄れて消えてしまうことから、「相手との関係が消える」「別れ」を連想させる縁起の悪い贈り物とされる傾向があります。せっかく関係を深めようとしているのに、別れを暗示させてしまったら悲しいですよね。
一方で、イスラム教では清潔さと香りの良さを美徳としており、アルコールフリーの香水なら喜んで使う方もいらっしゃいます。ただ、初対面の方や伝統を重んじる方に対しては、リスクを避けるために香水は選ばないのが賢明かなと思います。
続いて世界中で似たようなジンクスがあるハンカチですが、インドネシアでも明確なタブーとされています。ハンカチは「涙を拭くもの」であり、そこから「悲しみ」や「別れ」を強く象徴してしまうのですね。
日本でよくある「可愛い和柄のハンカチ」や「今治タオルのハンカチ」などは品質が良くてお土産にぴったりと思われがちですが、お祝い事のプレゼントとしては不適切です。
ハサミや包丁、ペーパーナイフなどの刃物類も、「縁を切る」という象徴的な意味を持つため厳禁です。結婚祝いやビジネスの節目に高級な包丁セットを贈ると、関係を断ち切りたいという意思表示に誤解される恐れがあります。
もしどうしても日本製の高品質なタオルなどを贈りたい場合は、極めて個人的な間柄になってからにするか、贈る際に「日本の伝統的な織物で、実用的なのでぜひ使ってください」と意図を丁寧に説明するなどのフォローがあると安心ですね。

お菓子など食品お土産の注意点
日本からインドネシアへ行く際、最も定番となるのがお菓子や食品のお土産ですよね。「東京ばな奈」や「抹茶味のキットカット」などは現地でも知名度が高く、喜ばれるプレゼントの代表格です。
しかし、ここでも「ハラール」への配慮が避けて通れない最大の壁となります。
日本の食品表示ラベルを見る際、私たち日本人が普段気に留めない成分が、イスラム教徒の方にとっては重大なハラム(禁忌)となるケースが多々あります。
たとえば、和菓子のあんこを滑らかにするために入っている少量の乳化剤、お煎餅の隠し味に使われているポークエキス、洋菓子の風味付けの洋酒などは、すべてNGになってしまうのですね。
動物性の原材料が含まれているものは、「これは豚由来ではないか?」という疑念を持たれてしまい、結局口をつけてもらえないこともあります。
そこで一番確実で安心なのが、パッケージに「ハラール認証マーク」が印刷されている商品を選ぶことです。

たとえば、広島の「もみじ饅頭(やまだ屋)」や岡山の「きびだんご(廣榮堂)」などは、いち早くハラール認証を取得しており、インドネシアの方に成分を説明する手間も省けて絶対的な安心感を与えられます。
もしハラール認証のお菓子が見つからない場合は、代替表示に注目してみてください。パッケージに「100%植物性」や「動物性原料不使用(Vegan friendly)」といった記載があれば、厳格な認証がなくてもハラールに近い「安全な選択肢」として受け入れられやすい傾向があります。
抹茶味や小豆を使った完全植物性の和菓子などは、日本らしさもあってとてもおすすめかなと思います。
ビジネスとインドネシアのプレゼントのタブー
プライベートでの贈り物以上に気を遣うのがビジネスシーンでの贈答です。インドネシアのビジネス現場では、書面上の契約よりも「Personal relationship(個人的な信頼関係)」が成否を大きく左右すると言われています。
ここでは、ビジネスを円滑に進めるためのプレゼントのエチケットについて深掘りしていきましょう。
ビジネスでの色や包装の選び方
品物の中身がどれだけ素晴らしくても、それを包むラッピングの「色」を間違えてしまうと、不謹慎なメッセージとして受け取られてしまう危険性があります。
インドネシアでは色彩に対して特有の文化的な意味付けがなされているため、日本での「上品でお洒落」という感覚だけで選ぶのは避けたほうがよいでしょう。
たとえば、日本ではスタイリッシュで高級感があるとされる「白・黒・青」の組み合わせは、インドネシアでは一般的に葬儀や「死」「悲しみ」を連想させる色とされています。

| 色 | インドネシアにおける意味・印象 | 贈答での使用アドバイス |
|---|---|---|
| 白・黒・青 | 一般的に葬儀や「死」「悲しみ」を連想させる。 | お祝い事やビジネスギフトの包装紙・リボンとしては避ける。 |
| 赤・ピンク | 中国系インドネシア人の間で「おめでたい色」とされる。 | 祝賀会やビジネスの招待状、中華系の方への包装に好まれる。 |
| 金・オレンジ | 金運アップ、成功、エネルギー、明るさを象徴する。 | 最も安全で喜ばれる色。ビジネスギフトの包装に最適。 |
| 緑 | イスラム教の象徴色。清浄や平和を意味する。 | ムスリムの方への贈り物として非常に肯定的に受け入れられる。 |
もし包装の色に迷ったときは、「金」「オレンジ」「緑」のいずれかを選ぶのが最も安全で確実かなと思います。
また、花束などを贈る際にも数のジンクスがあり、偶数の本数は縁起が良いとされる一方で、奇数は不吉とされることがあるので、バラなどの花を贈る際には本数にも気を配ってみてくださいね。
日本の化粧品など喜ばれる品
数々のタブーをクリアした上で、ビジネスパートナーやそのご家族に何を贈れば本当に喜ばれるのか気になりますよね。
インドネシアの方々にとって、「Made in Japan」の品質に対する信頼は今でも絶大です。なかでも近年、SNSの影響で爆発的な人気を誇っているのが日本製の化粧品やスキンケアアイテムなんですね。
たとえば、「fino(フィーノ)」のヘアマスクや、「サナ」のアイクリーム、資生堂の「アネッサ」といった日焼け止めなどは、現地の若い女性を中心に大流行しています。
もし取引先の担当者が女性であったり、男性担当者のご家族向けにお土産を渡す機会があれば、こうした日本のドラッグストアで買えるような高品質なコスメは、高級菓子以上にテンションが上がる喜ばれる贈り物になります。
また、ビジネスパーソン本人に向けて贈るなら、精密機器や文房具も根強い人気があります。G-SHOCKの日本限定モデルや、パイロットの「消せるボールペン(フリクション)」などは、実用的かつ特別感があるためオフィスで重宝されます。
さらに、インドネシアの文化に寄り添うという意味で、「バティック(Batik)」という伝統的な染物を贈る、あるいは自分が着用して訪問するのも非常に効果的です。インドネシアでは毎週金曜日がバティックを着る日として定着しいます。

誕生日の逆おごりという習慣
インドネシアの誕生日のお祝いは、日本とは少し違うユニークな文化があります。
日本では、誕生日を迎える主役のために周りの友人がサプライズでプレゼントを用意したり、ディナーをご馳走したりするのが一般的ですよね。しかし、インドネシアには「誕生日の主役が周りの人に逆おごりをする」という驚きの習慣があるんです。
インドネシアでは、無事にまた一つ歳を重ねられたことに対する感謝の気持ちを込めて、誕生日の本人が同僚や友人をランチに誘ってご馳走したり、オフィスにピザやドーナツを差し入れたりします。
主役が周りに振る舞う文化があるため、こちらから過度に高価な誕生日プレゼントを贈ってしまうと、相手に「おごり」に対するプレッシャーや負担を感じさせてしまうことがあります。
したがって、もし出張中や駐在中に現地のスタッフの誕生日を知ったとしても、気を遣って高価な品を用意する必要はありません。ちょっとした質の良い日本のお土産などを「お誕生日おめでとう!」という言葉と一緒に渡すくらいが、最もスマートで喜ばれる振る舞いなのかなと思います。
訪問時の手土産の必須エチケット
インドネシア社会において、人間関係の潤滑油として欠かせないのが「Oleh-oleh(オレオレ)」と呼ばれるお土産の文化です。誰かの家を訪問するときはもちろんですが、ビジネスで他のオフィスを訪問する際にも、絶対に「手ぶら」で行くことは避けるべきとされています。
このオレオレは、高価な品である必要はまったくありません。駅で買ったちょっとしたお菓子や、果物、あるいは地元の名物など、どんなにささやかなものでも構わないのです。
重要なのは品物の金額的な価値ではなく、「あなたを訪問するために、わざわざこれを準備してきました」という心遣いを示すことなんですね。手ぶらで訪問することは、相手への関心が薄い、あるいは礼儀知らずであると見なされてしまう可能性があります。
そして、日本ではもらったプレゼントをその場で開けて、「わあ、素敵!」と喜びを表現することが礼儀とされる場面も多いですが、インドネシアでは「いただいたギフトをその場ですぐに開封しない」のが一般的なマナーとされています。
インドネシアですぐに開けないのは「物欲を出さない」という現地の謙虚なマナーなので、後でゆっくり楽しんでくれるはずです。
ですから、渡した相手がそのままそっと横に置いたり、引き出しにしまったりしても、「気に入らなかったのかな?」と不安になる必要はありません。それは相手が後で家族と一緒にゆっくり楽しむという、謙虚さの表れなんです。

インドネシアのプレゼントのタブーの総括
ここまで、インドネシアにおけるプレゼントのタブーや贈答文化の裏側について、さまざまな角度から詳しく解説してきました。日本で当たり前だと思っていることが、現地では、思いがけないマナー違反になってしまうことがお分かりいただけたかと思います。
インドネシアにおける「プレゼント」とは、単なるモノとモノの交換ではありません。相手が大切にしている宗教の教え、地域に根付いた文化、そして人間としてのプライドに対する「敬意の表明」そのものなんですね。
相手がムスリムであれば豚やアルコールを完全に排除し、ヒンドゥー教徒であれば牛製品を避ける。そしていかなるときも「右手」を使って丁寧に受け渡しをする。これだけでも、相手は「この人は私たちの文化を理解し、尊重してくれている」と深く感動してくれるはずです。
日本の「Made in Japan」という絶対的な品質への信頼に、相手の文化に寄り添う配慮を組み合わせれば、これ以上ない最強の贈り物になります。

この記事でご紹介したタブーやマナーをチェックリストとして活用していただき、インドネシアの友人やビジネスパートナーと、より深く素晴らしい関係を築いていけることを心から応援しています。ぜひ、素敵なプレゼント選びを楽しんでくださいね。
【免責事項とアドバイス】 今回ご紹介したタブーやマナー、各種数値データは、あくまで一般的な目安となります。インドネシアは多様性の国であり、宗教の解釈や現地の習慣は、地域や世代、個人の価値観によって柔軟に変化する場合があります。最終的なご判断は、相手との関係性を考慮し、必要に応じて現地の専門家や長年駐在している方に相談するなどして、自己責任のもとで贈り物を選んでみてくださいね。